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From Tokyo to the world.

谷崎潤一郎 『私』

2007.12.15 [ Edit ]

古本屋の店先で手にとった1冊の本が「買ってください」といわんばかりの視線で僕を見つめる。
そんな経験はないだろうか。
古書を集める趣味はないのだけれど、こういう珍品を見かけると、つい手が出てしまうのである。

扉
こちらの画像は扉。(箱に入っているので中身はきれい。ただし、終戦後の本なので、紙と印刷の質は最悪。インクが薄くて読めないページあり。)
※画像はクリックで拡大します。


【書名】
谷崎潤一郎著 『短編集 私』 全國書房刊 昭和廿二年 B5版 265頁

【収録作品】
「私」、「馬の糞」、「不幸な母の話」、「ちひさな王國」、「前科者」、「或る調書の一莭」、「西湖の月」

奥付

奥付。「谷崎」の検印つき。


昭和22年といえば『細雪』が連載中であり、戦時中に発禁扱いとされた谷崎が傑作を次々に出版していた時期にあたる。つまり、文豪・谷崎潤一郎の人気絶頂期に刊行された短編集なのである。
とはいうものの、本書は Wikipedia にも掲載されておらず、マイナーな初期の作品を収録したものであるようだ。(全集本などできちんと調べたわけではないが、おそらく大正10年前後に書かれた短編と思われる。)

わが国を代表する文豪であり、世紀の変態作家、谷崎の珍本。それだけで、わくわくするのである。
ちなみに、売価千円であった。そんなに高い代物ではないのだな。

「私」冒頭

「私」の冒頭部分。一高の寄宿舎に住む学生たちが、犯罪について語り合っているところ。いきなり物騒で胡散臭い場面である。


というわけで、読んでみた。
上の画像のとおり、旧かな旧字体だが、谷崎の文章は極めて平易であり、読みやすい。
本書の収録作品の大半は、“犯罪小説”である。
表題作、「私」は叙述トリックを用いた佳作。今となってはさすがに使い古された感があるが、なんといってもアガサ・クリスティの“あの”名作より5年も前に書かれていることに注目したい。


谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2) (集英社文庫 た 28-2)谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2) (集英社文庫 た 28-2)
(2007/12/14)
谷崎 潤一郎

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などと思っているうちに、「私」が再録されている文庫本が最近、発売された。(「私」以外の作品は重複していないようだ。)
また、手にとってみることにしよう。
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