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芥川龍之介 『雛』

2009.05.05 [ Edit ]

芥川龍之介 『雛』 (青空文庫)

 『雛』 は、大正12(1923)年に発表された短編小説。
 明治の昔、没落した士族の父は、立派な雛人形一式を骨董屋に売り、家計の足しにすることにした。買い手は横浜の亜米利加人。骨董屋は父に半額の手付金を渡す。
 娘の 《わたし》 は、もう一度雛人形を見たいとせがむが、父は「一度手附けをとつたとなりやあ、何処にあらうが人様のものだ。人様のものはいぢるもんぢやあない。」と言って許さない。
 いよいよ雛人形を手放す前の夜、《わたし》 は薄暗い行燈をともした土蔵に、父の横顔を見つける。父は雛人形を並べて眺めていたのである。

 しかしわたしはあの夜更けに、独り雛を眺めてゐる、年とつた父を見かけました。これだけは確かでございます。さうすればたとひ夢にしても、別段悔やしいとは思ひません。兎に角わたしは眼のあたりに、わたしと少しも変らない父を見たのでございますから、女々しい、……その癖おごそかな父を見たのでございますから。


 雛人形を愛する全ての女性に、娘を愛する全ての父親に、読んでいただきたい好篇である。
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