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夏目漱石 『坊っちゃん』

2008.03.20 [ Edit ]

 新潮文庫版 『坊っちゃん』の巻末の解説に、こんなことが書かれている。

・『坊っちゃん』は576字詰原稿用紙149枚(400字詰換算215枚)に執筆された。
・執筆期間は1週間前後と推定される。
・原稿には消しや直しを行った箇所がきわめて少ない。

 Amazon.co.jp:直筆で読む「坊っちやん」 (集英社新書 ビジュアル版 6V) には、「三週間で書き上げたといわれる」と書かれており、また、レビューを読むと、一部口述筆記だったものを後から清書したようでもある。それでも物凄い速さで本作が執筆されたことに変わりはない。(集英社新書のほうは未読なので、一度手にとってみたいと思っている。)

 『坊っちゃん』の面白さは、第一に主人公の語り口であり、第二にテンポの速さである。
 短気で直情径行、江戸っ子気質の主人公「おれ」は、四国の中学校に教師として赴任する。しかし、もう端から四国の人間を田舎者だとして馬鹿にしている。また、教師という職業を舐めきっており、授業など最初からルーティン扱いである。(その結果、逆に生徒から逆襲される。)正義感が強いと自称しているが、大義というよりは私怨によって行動しているようにも見える。
 ひどい主人公だが、憎めない。無茶苦茶な展開だが、お構いなしに、どんどん話が進んでいく。

 400字詰215枚、文庫本で180ページ弱というのは、小説としては中編のボリュームだが、登場人物の数、次々と起こる事件の数々を考えると、大長編に匹敵するほど中身が詰まっているといえよう。主人公は常に饒舌であり、時には脱線したり、余計なエピソードまでついている。その代わり、脇役の描写は極端に単純化され、マンガ的にデフォルメされている。
 漱石の小説には、他にこれほど忙しい展開のものはないが、登場人物がマンガ的という点では、『虞美人草』が共通するかもしれない。別の意味でこれも面白いので、また感想を書きたいと思う。




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夏目 漱石

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