[PR] ウィークリーマンション

FETISH STATION

From Tokyo to the world.

谷崎潤一郎 『白晝鬼語』

2009.07.03 [ Edit ]

 今夜殺人事件が起こるから一緒に見に行こう ―― 《私》 に電話をかけてきた園村は、いきなりそんなことを言う。

「君、君、電話口でそんな大きな声を出しては困るよ。………誰が誰を殺すのだかは、僕にも分かって居ない。精しい事は電話で話す訳には行かないが、僕は或る理由に依って、今夜或る所で或る人間が或る人間の命を断とうとして居る事だけを、嗅ぎつけたのだ。勿論その犯罪は、僕に何等の関係もあるのではないから、僕は其れを豫防する責任も、摘発する義務もない。たゞ出来るならば犯罪の当事者に内證で、こっそりと其の光景を見物したいと思うのだ。君が一緒に行ってくれゝば僕もいくらか心強いし、君にしたって小説を書くよりは面白いじゃないか。」


 探偵小説というのはたいがい犯人を推理したり、トリックを暴いたり、犯行の動機をつきとめたりすることに読者の興味を持っていくわけだが、『白晝鬼語』(大正7年発表)の場合、興味の対象はあくまでも犯行場面そのもの、そして探偵の側の動機である。探偵といっても素人探偵だから動機は単純、野次馬なのだ。
 「その犯罪は、僕に何等の関係もあるのではないから、僕は其れを豫防する責任も、摘発する義務もない。」というセリフは主人公の発言にしてはあまりにも無責任だが、野次馬とは所詮そんなものだろう。もちろん、野次馬的興味を持っているのは、小説の読者も同様である。
 では野次馬的興味を極限まで突き詰めて行ったらどうなるのか。案の定、ミイラとりがミイラになったりするのだが、そのあとさらに! そして!……というのが、本作の面白さなのであった。


谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2)谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫 た 28-2)
(2007/12/14)
谷崎 潤一郎

商品詳細を見る

 集英社文庫版は新字・新かな表記のため、『白昼鬼語』 というタイトルになっている。

潤一郎ラビリンス〈7〉怪奇幻想倶楽部 (中公文庫)潤一郎ラビリンス〈7〉怪奇幻想倶楽部 (中公文庫)
(1998/11)
谷崎 潤一郎

商品詳細を見る

 中公文庫版は旧字表記で、『白晝鬼語』 になっています。
  スポンサーサイト
隣の奥さん - http://ksds.jp/?adv=LP25280
隣の奥さんに直メール★圧倒的NO.1の人妻系コミュニティー♪
フレンズマップ - http://numberz.net/?3907
18歳以上限定のSNSサイト★激カワ娘とHな写メ交換♪
RE:はじめまして - http://466.jp/?adv=LP25283
出会いの検索エンジン★素敵な出会いを探してみませんか?

夏目漱石 『私の個人主義』

2009.07.03 [ Edit ]

 明治44年、大阪朝日新聞社主催、夏目漱石講演会が関西各地で行われ、講演の速記録は改稿の上、評論として出版された。『私の個人主義』(講談社学術文庫)は、このときの文章を集めた本である。
 このうち、明治44年8月、明石における講演は 「道楽と職業」 と題されている。職業観がテーマなので、小説 『それから』 に通じる内容である。きわめて真面目な講演なのだが、語り口は軽妙で、非常にわかりやすい。まるで、『坊っちゃん』 の文体で 『それから』 を読んでいるような感じがする。文豪漱石が読者に直接語りかけてくるような 《話し言葉》 が魅力である。

 私が演説を頼まれて即席に引受けないのは、足袋屋みたいにちょっと出来合いがないからです。どうか十文の講演をやってくれ、あそこは十一文甲高(こうだか)の講演でなければ困るなどと注文される。そのくらいに私が演説の専門家になっていれば訳はありませんが私のお手際はそれほど専門的に発達していない。素人が義理に東京からわざわざ明石辺までやって来るというくらいの話でありますから、なかなかそう旨(うま)くはいきませぬ。足袋屋はさておいて食物屋(たべものや)の方でもチャンとした専門家があります。例えば牛肉も鳥の肉も食わせる所があるかと思うと、牛肉ばかりの家(うち)があるし、また鳥の肉でなければ食わせないという家もある。あるいはそれが一段細かくなって家鴨(あいがも)よりほかに食わせない店もある。しまいには鳥の爪だけ食わせる所とか牛の肝臓だけ料理する家ができるかも知れない。分れて行けばどこまで行くか分りません。こんなに劇(はげ)しい世間だからしまいには大変なことになるだろうと思う。
 とにかく職業は開化が進むにつれて非常に多くなっていることが驚くばかり眼につくようです。

 夏目漱石 『私の個人主義』 より 「道楽と職業」


 職業の専門分化について述べた箇所の引用だが、話が具体的でしかもユーモアを感じさせる。それにしても、話の展開が速すぎるのではないか。生で聴いていたら、よほど集中していない限り何の話題なのかわからなくなってしまうくらい、ほとんど脱線に近い展開であろう。もっとも実際は、かなりゆっくりしゃべっていたのかもしれない。途中、会場に笑いが起こったりして、そういうときは少し間を置いてみたり、ちょっと得意そうに指先で口髭をこすってみたりしたのではないだろうか。
 ところで、関西講演会の最終日、大阪での講演終了後、漱石は持病の胃潰瘍が悪化し、当地の病院へ入院してしまう。そのときの模様については、夏目鏡子夫人の回想録、『漱石の思い出』 に書かれている。

 社の方がよくかわるがわるお見舞いにきてくださるうちに、小西勝一さん(引用者注:朝日新聞社専務取締役)は毎日毎日顔を出して、初め私がまだ参らない前には、お気の毒なくらい心配して何かと気をつけて買いととのえたりしてくだすったそうですが、……(中略)……後でも社が退けるときっと一度は顔を出されて、奥さんの前だが、夏目さんの講演はいたるところ女学生に大持てでしてねなどと話してかえられたものでした。

 夏目鏡子述・松岡譲筆録 『漱石の思い出』


 夏目先生、ちょっと頑張りすぎちゃった、というのが真相かもしれない。



私の個人主義 (講談社学術文庫 271)私の個人主義 (講談社学術文庫 271)
(1978/08)
夏目 漱石

商品詳細を見る

漱石の思い出 (文春文庫)漱石の思い出 (文春文庫)
(1994/07)
夏目 鏡子松岡 譲

商品詳細を見る

夏目漱石クイズ

2009.06.28 [ Edit ]

 選択肢の中から、正しいものを一つ選んでくださいね。


【第1問】 『吾輩は猫である』 の主人公、吾輩が意識しているメス猫の名前は?
 A. タマ
 B. 三毛子
 C. リリー

【第2問】 『坊っちゃん』 の主人公が四国の中学校へ赴任したときの初任給は?
 A. 40円
 B. 400円
 C. 4,000円

【第3問】 『坊っちゃん』 の主人公と山嵐は、赤シャツと野だに鉄拳制裁を加えます。このとき、坊っちゃんが野だに投げつけたものは何?
 A. 刀
 B. ねずみ花火
 C. 生卵

【第4問】 次の小説の中で、主人公がもっとも若いのはどれ?
 A. 『坊っちゃん』
 B. 『三四郎』
 C. 『坑夫』

【第5問】 『二百十日』 の主人公、圭さんと碌さんが熊本の宿で飲んだビールの銘柄は?
 A. 麒麟
 B. 朝日
 C. 恵比寿

【第6問】 『三四郎』 の主人公、小川三四郎の出身地は?
 A. 福岡
 B. 熊本
 C. 広島

【第7問】 『それから』 の主人公、代助が読んでいる新聞連載小説は?
 A. 森田草平 『煤煙』
 B. 島崎藤村 『春』
 C. 夏目漱石 『虞美人草』

【第8問】 『門』 の主人公、宗助が吸っている煙草の銘柄は?
 A. 敷島
 B. 朝日
 C. ゴールデンバット

【第9問】 「高等遊民」 とは夏目漱石の造語ですが、「高等遊民」 という言葉が初めて使われた小説は次のうちどれ?
 A. 『それから』
 B. 『彼岸過迄』
 C. 『こころ』

【第10問】 『明暗』 の主人公、津田は、温泉場へ向かう途中、乗った軽便鉄道の脱線事故に遭遇します。さて、この時に乗客がとった行動は?
 A. 線路の上を次の駅まで歩いた
 B. 運転手に詰め寄って、罵詈雑言を浴びせた
 C. みんなで車両を押した



 正解はこちらから。
夏目漱石クイズ:回答編

田山花袋 『少女病』

2009.06.01 [ Edit ]

 37歳の主人公、杉田古城は文学者である。若い頃は多少売れる小説も書いたが、最近は鳴かず飛ばず。出版社で校正の仕事に追われる日々である。しかし、仕事の合間にも、美文新体詩を書き、少女の美しい姿を想像しては原稿用紙に向かっている。同僚は杉田を揶揄して、こんなことを言う。

 「少女万歳ですな!」


 そんな彼の、文学以外の趣味は、通勤電車の中で見かける少女を観察することであった。
 杉田の住まいは千駄ヶ谷である。当時は田圃の広がるのどかな郊外だった処だ。春の朝、彼が代々木から電車に乗ると、はす向かいに二人の少女の姿がある。

 年上の方の娘の眼の表情がいかにも美しい。星――天上の星もこれに比べたならその光を失うであろうと思われた。縮緬(ちりめん)のすらりとした膝のあたりから、華奢な藤色の裾、白足袋をつまだてた三枚襲(さんまいがさね)の雪駄、ことに色の白い襟首から、あのむっちりと胸が高くなっているあたりが美しい乳房だと思うと、総身が掻(か)きむしられるような気がする。一人の肥(ふと)った方の娘は懐(ふところ)からノートブックを出して、しきりにそれを読み始めた。


 少女を観察するには 「七分くらいに斜(はす)に対して座を占めるのが一番便利」 だと書かれているとおりだが、この観察力は常軌を逸している。
 千駄ヶ谷では 「不器量な、二目とは見られぬような若い女」 が乗ってくる。
 信濃町では収穫なし。
 四ツ谷から18歳くらいの美しい女学生が乗車する。彼女は混雑する車内で、杉田の前に立った。

 こみ合った電車の中の美しい娘、これほどかれに趣味深くうれしく感ぜられるものはないので、今までにも既に幾度となくその嬉しさを経験した。柔かい着物が触る。えならぬ香水のかおりがする。温かい肉の触感が言うに言われぬ思いをそそる。ことに、女の髪の匂いというものは、一種のはげしい望みを男に起こさせるもので、それがなんとも名状せられぬ愉快をかれに与えるのであった。


 杉田は結婚して子供も二人いる。だが、若い頃の妻への情熱はとっくに冷めている。出版社の仕事はつまらない。

 午後三時過ぎ、退出時刻が近くなると、家のことを思う。妻のことを思う。つまらんな、年を老(と)ってしまったとつくづく慨嘆する。若い青年時代をくだらなく過ごして、今になって後悔したとてなんの役にたつ、ほんとうにつまらんなアと繰り返す。若い時に、なぜはげしい恋をしなかった? なぜ充分に肉のかおりをも嗅(か)がなかった? 今時分思ったとて、なんの反響がある? もう三十七だ。こう思うと、気がいらいらして、髪の毛をむしりたくなる。
 (中略)
いくら美しい少女の髪の香に憧れたからって、もう自分らが恋をする時代ではない。また恋をしたいたッて、美しい鳥を誘う羽翼(はね)をもう持っておらない。と思うと、もう生きている価値(ねうち)がない、死んだ方が好い、死んだ方が好い、死んだ方が好い、とかれは大きな体格を運びながら考えた。


 「死んだ方が好い」 を3回も繰り返すくらい、絶望しているのである。
 帰りの電車では混雑のため、車掌のいる所に割り込んで、扉の外に立ち、真鍮の棒につかまっている。ふと見ると、車中に美貌の令嬢がいる。混雑とガラス越しのため、杉田はその姿に見とれてしまう。市谷を過ぎたあたり、電車が急に揺れ、他の乗客に押された彼の手は真鍮の棒から離れ、その体は線路に転がり落ちる。そこへ反対方向から上り電車が走ってきて……


 田山花袋 『少女病』 は、明治40年に発表された短編小説である。
 「何この変態!」 と一言でまとめてしまうことのできるような話ではあるが、車内光景の描写、主人公の心理描写ともに、すさまじいまでのリアリティを感じさせる。
 本作には名前を持った女性は一人も登場しない。ここに描かれる 《少女》 たちは記号にすぎず、彼女たちの容姿(の一部)が極端にまで美化され、主人公の中で理想化されているのである。
 かつて1980年代には女子大生ブーム、90年代には女子高生ブームがあった。そして、似たような意味の少女ブームは現在に至るまで続いている。逆に、時代を遡っていくと、100年前に書かれたこの小説にたどり着くのではないか。『少女病』 は現代にも通じる 《記号化された少女》 と、都市生活の憂鬱と、中年の悲哀とを余すところなく描いた名作なのである。


少女病少女病
(2008/12)
田山 花袋藤牧 徹也

商品詳細を見る

 昨年出版された小説と写真集のコラボレーション(?)という本。文庫本より一回り大きなサイズ。活字が大きく、詩集のような感覚で読める。


「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか (新潮文庫)「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか (新潮文庫)
(2008/09/30)
小池 滋

商品詳細を見る

 日本近代文学と鉄道の関係について書かれたエッセイ集。「電車は東京市の交通をどのように一変させたか」 という章で、『少女病』 についてくわしく論じている。(この本は本当に面白いので、おすすめです。)

谷崎潤一郎 『独探』

2009.05.24 [ Edit ]

 大正4年に発表された短編小説。独探とはドイツのスパイという意味だが、スパイ小説ではない。
 《私》 ことミスター・タニザキは西洋に憧れ、外国語を学びたいと思っている。初めて紹介された墺太利(オースタリー)人 G 氏からドイツ語を教わるのだが、G 氏がきわめて胡散臭い人物だったからさあ大変、という喜劇仕立ての話である。

 ひたすら西洋(というより白人か)を崇拝する 《私》 と G 氏の奇妙なやりとりだけで、どんどん引っ張っていく不思議な小説だ。特別な事件が起こるわけではなく、すごい美女が登場するわけでもなく、ようするに何だかよくわからない話なのである。にもかかわらず、次はどうなるんだろう? と読み進めてしまうのは、谷崎マジックにちがいない。
 文章はきわめて平易であり、表現に特別な工夫がこらされているとは思えない。どちらかというと、文脈の組み立て方に、独特の味わいが感じられる作品だと思う。


潤一郎ラビリンス〈6〉異国綺談 (中公文庫)潤一郎ラビリンス〈6〉異国綺談 (中公文庫)
(1998/10)
谷崎 潤一郎

商品詳細を見る

Profile

Ken

Author:Ken
・このブログには性的な表現が含まれています。18歳未満の方、嫌悪を感じる方はご退出下さい。
・リンクのないトラックバックは受け付けておりません。
管理人宛メールフォーム

Recent Entry

Recent Comment

Recent Trackback

Category

Links

ブログ内検索

Archives

RSSフィード

QRコード

QRコード